2024年 4月 28日 (日)

沖縄「基地」めぐる世代間格差 若くなるほど高い「容認度」

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   多くの住民が巻き添えになった沖縄戦の組織的戦闘が終結したとされる「慰霊の日」にあたる2015年6月23日、沖縄県の翁長雄志知事は沖縄全戦没者追悼式の式辞で米軍普天間飛行場(宜野湾市)の辺野古沖(名護市)移設の中止を求めた。参列者からは賛同を示す口笛や拍手が鳴り、「オール沖縄」での「反基地」を印象づけた。

   だが、世代別にみると必ずしも「オール沖縄」とはいかないようで、世論調査では世代が若くなるについて「容認度」が高くなっている。特に高校生を対象に行われた調査では、5年前に比べて「国外・県外移設」を求める声が大幅に減り、「普天間のまま」という声が増えている。このまま世代交代が進むと、政府が主張する「普天間の危険除去」ですら沖縄県民の問題意識から遠ざかっていくことになりそうだ。

  • このままでは若者の間に「普天間容認論」が増えそうだ(写真:AP/アフロ)
    このままでは若者の間に「普天間容認論」が増えそうだ(写真:AP/アフロ)
  • このままでは若者の間に「普天間容認論」が増えそうだ(写真:AP/アフロ)

翁長知事には拍手と口笛、安倍首相には「さっさと帰れ!」のヤジ

   糸満市の平和祈念公園で行われた追悼式では、翁長知事は

「辺野古に新基地を建設することは困難」
「政府においては、固定観念に縛られず、普天間基地を辺野古に移設する作業の中止を決断され、沖縄の基地負担を軽減する政策を再度見直されることを強く求めます」

と主張して参列者の喝采を浴びる一方で、安倍晋三首相は「さっさと帰れ!」などとヤジを受けながら、

「沖縄の人々には、米軍基地の集中など、永きにわたり安全保障上の大きな負担を担っていただいています。この3月末に西普天間住宅地区の返還が実現しましたが、今後も引き続き、沖縄の基地負担軽減に全力を尽くしてまいります」

と述べた。辺野古移設への直接の言及は避けた。

世代が下がるについて「反対」の割合も低くなる

   この光景は「オール沖縄」を印象付けるが、沖縄県民を対象にした世論調査の結果は、必ずしもそうはなっていない。沖縄タイムスと琉球放送(RBC)が15年4月に行った県内世論調査では、普天間飛行場の辺野古移設の是非について65.3%が反対を表明。全体の民意としては「反対」なのは間違いない。ただ、その「反対」の割合を年代別にみると、60歳以上が71.4%、40~59歳が64.2%、20~39歳が60.4%と世代が下になるにつれて抵抗感が薄れていることが分かる。「賛成」と答えた人の割合も、世代が若くなるにつれて高くなっている。

   「『沖縄の基地が減らないのは、本土による沖縄への差別』という意見をどう思うか」という問いにも、51.6%が「その通りだ」と感じている。過半数が「基地があることは差別」だと感じていることになる。

   たが、ここでも世代別にみると大きく受け止め方が変わってくる。60代以上は「その通りだ」が67.3%、「そうは思わない」が28.3%と大きな差があるが、40~59歳は拮抗。20~39歳では、「その通りだ」が36.2%に対して「そうは思わない」が62.1%で、若い世代では大きく傾向が変わっていることが分かる。

普天間移設について意見聞かれ「わからない」が36%

   対象を高校生にしぼると、その傾向はさらに顕著だ。

   沖縄歴史教育研究会と沖縄県高教組は15年1月から3月にかけて県内の高校60校を対象に平和教育に関するアンケートを行い、36校・2340人から回答を得た。調査は5年ごとに行われている。

   「沖縄に米軍基地があることについて、どう思いますか」という問いに対しては、「全面撤去すべき」または「整理・縮小すべき」と回答した人は、1995年は83.8%、2000年に59.0%、05年に73.9%、10年に66.3%、15年に62.0%といった具合に変化している。1995年には米兵による少女暴行事件、2004年には沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事件が起こっており、その直後の調査で「撤去」「整理・縮小」の声が高まっていることが分かる。なんらかの事件が起こると声が高まり、時間の経過にともなって右肩下がりになるという構図だ。そう考えると、ここ5年ほどで辺野古関連の報道の量からすれば、15年の調査では「撤去」「整理・縮小」の声が増えそうだが、実際はそうはならなかった。こういった点について、沖縄歴史教育研究会では

「若者の基地の容認化が進んでいる証であろう。基地問題について、具体的に学ぶ機会が少ないことが要因として考えられる」

と「学ぶ機会」の不足が影を落としているとみている。

   普天間移設については、さらに「容認化」の傾向は強まっている。「普天間基地の移設場所について、どう思いますか」という問いに対して、前回10年の調査では「国外・県外移設」46.8%、「辺野古・勝連沖」5.7%、「普天間そのまま」14.8%、「わからない」32.7%だった。これに対して今回の調査では、「国外・県外移設」34.6%、「辺野古移設」8.8%、「普天間そのまま」20.7%、「わからない」36.0%。「国外・県外移設」が減少し、その分「辺野古移設」「普天間そのまま」が増えていることが分かる。基地への容認度が高まっているのはもちろん、「わからない」の割合が増えていることからすると、無関心な高校生も増えていることになる。

   その背景として、沖縄歴史教育研究会では(1)米軍基地の成立過程(歴史)やその役割を知らない(2)そのため普天間基地の危険性をよく理解していない(3)沖縄経済が基地依存で成り立っているという誤った認識を持っている、といった点を挙げており、今沖縄で起こっていることを、言わば「点」として教えるだけではなく、基地ができるまでの文脈を踏まえた「面」で教えていく必要性を強調している。

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